アジア艦隊がフィリピンから脱出しようと動いている頃、太平洋艦隊司令部では2人の将校が

激論を繰り広げていた。


「何故、アジア艦隊の脱出を支援しない?!」


 海軍きっての猛将と謳われるハルゼー中将は太平洋艦隊司令長官パイ大将に詰め寄った。

 しかしパイは首を横に振った。


「現状では空母3隻と戦艦7隻しかない。さらに兵士の士気、練度は低下して使い物にならない。

 今出て行ってもやられるだけだ。それに物資だって心もとない」


 ガーナーの命令でワスプとアラバマは回航することが決まっていたが、補給と補修のために

この2隻を中心とした艦隊はサンディエゴに寄航していた。津波による沈没艦こそなかったが、被害が

皆無とはいかなかったのだ。加えて救援活動のために疲労した乗組員の慰労も必要だった。

 しかしこのために大西洋で動ける艦が殆ど無くなるという事態が生まれた。大西洋艦隊司令長官に

命じられたゴームリーは、さらなる艦艇の派遣をキンメルに求めた。

 ハワイ防衛のために艦隊の集結を要請するパイだったが、大西洋を完全に空にすることはできなかった。

さらに民心を安定させるためには戦艦が必要だった。この時代において戦艦は軍事力の象徴だった。

 これらの事情が考慮された結果、西海岸に居たカリフォルニアとテネシーが大西洋に回されることが

決定したのだ。残ったホーネットは、高速輸送船のように使われ、ハワイと西海岸の間を行き来していた。


「ならば空母だけでも、アジア艦隊の脱出支援のために出撃させるべきだ!!」

「艦も、艦載機もいつ補充できるか判らない状況では無闇に船は出せない。来るべき日本海軍と

 の決戦に向けて少しでも兵力は温存しておきたい。残念なことに我々に後詰めはないのだから」

「………」


 大西洋で発生した大災害によって、米海軍はハード・ソフト両面から崩壊していた。

 両洋艦隊計画に基づいて東海岸で建造されていた新型艦とそれを建造できる造船所、兵や将校を育てる

学び舎と宝石より貴重なベテラン達、そして海軍の活動を支えるための事務を担っていた海軍省の官僚達が

まとめて消滅したことによって、米海軍の屋台骨は事実上へし折られた状態だった。

 キンメルが中心となって軍政・軍令系統の再建が急がれているが絶望的なまでに人手が足りなかった。

 さらに米国の航空産業を支えていた大企業も、その多くが施設と人員諸共消滅。さらに国内経済は津波に

よってズタボロとなり混乱は一向に収まる気配が無い。この余波で航空機や関連部品の納入が滞っていた。

 さらに日本海軍による通商破壊が始まると、船主達や組合は被害を恐れて船を出すのを渋り始め、米国の

海上輸送は日に日に先細る始末。これらのせいで太平洋艦隊は開戦以降、満足な補給を受けられなかった。


「しかしアジア艦隊を見殺しにすれば、各個撃破されるだけだ! アジア艦隊が脱出できれば、将兵達の

 士気高揚も期待できる!!」


 補給の途絶に加え本国を襲った未曽有の大災害の情報が伝わるに連れて、兵士達の士気は文字通り暴落し

米軍は軍としての機能すら失いつつあった。ハルゼーなどの一部の将校が必死に軍の統制を維持しているが

何時までそれが維持できるのかは判らない。


(一部マスコミは黄禍論をぶちまけ、必死に戦意を煽っているが、家族の安否さえわからない状況では……)


 東海岸に実家がある将兵達は、津波発生以来、気が気でない。加えて米本土の治安が急速に悪化していると

の情報が流れるようになると、内陸州出身の将兵達にも動揺が走るようになっていた。

 故にここで勝ち星を挙げて、将兵の士気を鼓舞したいと思うのは当然であった。


「アジア艦隊と太平洋艦隊、大西洋艦隊が合流できれば、政府連中が考えている決戦でも優位に立てる!!」


 この台詞を聞いたパイも遂に支援することを決意し、それを口に出そうとする。だがその言葉を発する直前に

信じられない悲報が飛び込む。


「ホーネットが雷撃を受けただと?!」

「ホーネットは沈没は免れましたが大破し、西海岸で本格的な修理が必要とのことです。さらに信じられない

 報告ですが……護衛艦隊の報告によれば、我がほうのソナーでは敵潜を発見できなかったそうです。

 加えて雷跡も確認できなかったとの報告があります」

「馬鹿な! 現場の人間のミスではないのか?!」


 しかしどちらにしてもホーネットは大破し、当面身動きが取れない。いや、現状では修理がいつできるかも

判らない。ただでさえ乏しい戦力が減ってしまったことには変わりは無いのだ。

 太平洋艦隊司令部の面々が顔面蒼白になるが、その彼らに更なる追い討ちが襲った。


「メキシコで大規模な反乱だと?」

「はい。さらにアルゼンチン、ブラジル、チリで紛争が発生。他の地域に飛び火しかねない状態とのことです。

 大統領府はこの事態に対処するために軍を送るという決定を下したようです」

「今の我が軍にそんな余裕があるのか? 本土の維持でさえ手一杯だろうに(そんなに海外権益が大事か)……」


 この場にいた将校は、臨時政府があまりに政治的な動機のみで動くことに苛立ちと不安を感じた。


「……さらに政府は短期間で、各国の動きを抑制するために戦艦を含む艦隊を一時的に中南米に送るとのことです」

「現状でさえ苦しいのにか?!」

「物資のやり繰りがつかないぞ!」

「冗談じゃない。今でさえ、各地の基地への補給に苦しんでいるというのに!!」


 この決定に提督たちは激怒した。乏しい補給、低下する士気とモラルの中で必死に軍を維持してきた将校から

すれば今の政府のやり方は容認できる限度を超えていた。

 しかしながら中南米の反乱や戦禍が拡大することは米国に悪影響しか及ぼさない。特にメキシコの反乱の影響が

南部諸州に及べばたたでさえ危機的状態が悪化しかねない。それを考えると致し方ないと言えるのだが、現場を

支える人間たちからすれば「ふざけるな!」であった。


「……どちらにせよ、アジア艦隊には独力でハワイにたどり着いて貰うしかないな」


 パイは苦虫を潰したような顔で結論を出し、解散を告げた。









          提督たちの憂鬱  第31話









 臨時政府の命令を受け、アジア艦隊はフィリピンから脱出すべく準備を進めていた。

 しかし脱出すると言っても実行するとなると、かなりの困難が予想された。何しろ開戦以降、暴れまわった

日本海軍がフィリピン周辺に展開している。さらにアジア艦隊の燃料は乏しいためハワイめがけて一直線に航行

せざるを得ない。それは日本軍の支配領域である中部太平洋を突っ切らなければならないことを意味していた。

 しかしそれでも尚、彼らは急がなければならない事情があった。


「台湾に日本軍が集結中か……ということは、連中はフィリピンに侵攻するつもりか」


 10月19日、アジア艦隊旗艦オクラホマの作戦室で、ハートは渋い顔をしていた。

 そのハートをさらに不機嫌にするような報告が参謀によって告げられる。


「戦艦6隻、それも長門型2隻を含む艦隊が高雄から出航したことは判っています」

「連中はどこに?」

「不明です。日本海軍の対潜能力は非常に高いようで、近づいた潜水艦は悉く撃沈されています」

「日本の空母は?」

「それも不明です。通信を傍受する限り、日本本土や台湾にいないことは確実なようですが……」

「………」


 開戦以降、日本軍の実力に驚かされてばかりだったために、ある程度耐性がついたのか、ハートはその耳が

痛い報告を聞いても嘆息するだけであった。

 尤も頭の片隅では、開戦前にいい加減な情報しか寄越さなかった情報部に対する怨嗟の声が挙がっていたが。


「このままでは日本軍のフィリピン侵攻に巻き込まれ、艦隊に要らぬ被害が出かねない」

「それでは、すぐに脱出すると?」

「そうだ。準備は終わっているのだろう?」

「はい。可能な限りの燃料と物資を掻き集めました。ハワイにいくまでなら十分です」

「……ならば良い。今夜にも艦隊は出航する。準備を怠るな」

「了解しました」


 かくしてアジア艦隊は、翌朝の出航に備えて動き出した。しかしながらその動きを見ていたスティルウェルは

ため息をついた。


「決断が遅い。脱出するにせよ、なんにするにせよ、もう少し迅速に決断するべきだった」


 日本軍の実力を嫌と言うほど思い知らされたスティルウェルは、ハートの決断が遅きに失したとしか思えない。


「このままではアジア艦隊も、在中米軍と同じ運命を辿るかも知れない……」


 しかしすぐにスティルウェルは首を横に振って嫌な予感を振り払う。


「ここで私が絶望にとらわれてどうする。私が何故、敵前逃亡の真似までして生きながらえたかを考えるんだ」


 今でも生き恥をさらしているようなものだが、彼には日本軍がどのような存在か、そして彼らがどのような

戦いを中国大陸で繰り広げていたかを詳細に報告し、その情報を本土の人間に活用させる義務があった。

 それができなければ、死んでいった部下達は文字通り犬死になる。


「諦めてはならない」


 彼はそういって己を奮い立たせると、日本軍の情報について細かくレポートにまとめていく。


「諦めなければ、何らかの道は開けるはずだ」


 しかしながら、現代戦というのは精神論、必勝の念だけではどうにもならない。今のアジア艦隊には勝利する

ために必要な兵力と情報が絶望的なまでに足りなかった。

 日本軍航空隊の恐るべき実力を実体験し、さらにスティルウェルから日本軍の夜戦能力が侮れないものである

ことを知らされたアジア艦隊は万が一の夜襲に備えて厳戒態勢を敷いたまま、出航した。

 アジア艦隊はサンベルナルジノ海峡を突破し、そのままハワイに向けて脱出する道を選んだ。もっと燃料に余裕が

あればスールー海を南下して、そのままパプワ・ニューギニア南方を経由してハワイに向かうこともできたのだが

燃料に余裕が無い彼らに、その道は取ることができなかった。


「対潜警戒を怠るな」


 ハートはこの狭い海峡で日本海軍の潜水艦に補足されることを恐れた。


(ここで発見されたら大変なことになる……)


 しかしながらこの海峡の東口にも、日本海軍は1隻の潜水艦を配備していた。その名は潜高2型潜水艦呂22号。

 ドイツ軍のUボートXXI型をモデルにして開発建造された通商破壊用ロ号潜水艦であった。

基準排水量1800tで水中最大出力が19.5ノットを誇る高速潜水艦であり、列強が持つ従来の対潜兵器では

対抗するのは難しいという米海軍にとってみれば厄介な存在だった。

 さらに厄介なのは硬質ゴム製無反響タイルにより、静粛性を大幅に向上させていたので、アクティブソナーを用いて

発見するのも難しくなっているということだろう。

 これだけでも十分にチートであったが、この艦には高性能の対空対水上電探まで装備されており、索敵能力を大幅に

向上させている。

 しかしこれだけの性能を持った艦を配備しても、艦政本部は満足しておらず、さらなる高性能潜水艦の開発に血眼と

なっていた。おかげで湯水のように金を使い、財務担当者は関連書類を見るたびに顔が引きつらせている。

 だが財務担当者と海軍省の役人達(嶋田筆頭)を生贄とした甲斐もあり、この艦は十分な仕事を果たした。

 そう、呂22号はアジア艦隊がサンベルナルジノ海峡を突破して、ハワイに向かっていることを艦隊司令部に伝える

ことに成功したのだ。さらにアジア艦隊は呂22号の存在に気付くことができなかった。






 アジア艦隊発見との報告は直ちに第3艦隊司令部のある赤城に伝えられた。

 20日0300時、第3艦隊はパラオの北北西400海里の位置に遊弋待機していた。


「アジア艦隊はサンベルナルジノ海峡を突破したか……ふむ、やはり最短距離で真珠湾に突進するつもりのようだな」


 小沢中将は呂22号の報告から、アジア艦隊の動きを察した。

 これに参謀長の山口も同意し、ただちに追撃にかかるべきだと主張した。


「ここから海峡までなら、我が艦隊の俊足をもってすれば、すぐに距離を詰めれます」


 闘将と知られる山口は航空攻撃で終わらせるつもりはなく、カナリア沖のように水上砲戦に持ち込んで

アジア艦隊を殲滅することを目論んでいた。彼は敵艦隊を1隻たりとも生かして帰すつもりは無かったのだ。

 小沢も山口の意見に頷き、サンベルナルジノ海峡に向かいつつ、0400から偵察機を出すことにした。

 同時に小沢は戦意が高揚することを自覚した。何しろ今から彼らは、日本帝国海軍軍人が夢見た米海軍との

決戦、それも史上初の空母決戦を行おうとしているのだ。これで戦意が高揚しない軍人はいない。

 津波によって壊滅的な被害を受けて、息も絶え絶えになっている米海軍に鞭打つ行為を行うというのは

良心の呵責を覚える部分もあるが、戦意を萎えさせるようなものでもなかった。


「第1艦隊との連携がうまくいけば挟み撃ちにできるな」


 このとき、高須中将率いる第1艦隊は、ルソン島の東岸、ディンガラン湾の東北東200海里の位置に

遊弋待機し、アジア艦隊を待ち構えていた。

 第1艦隊は戦艦6隻に加え、遣支艦隊から引き抜いた祥鳳型空母3隻を擁している有力な艦隊だ。

つまり第3艦隊とあわせると戦艦12隻、空母6隻、軽空母3隻がアジア艦隊を待ち構えていることになる。

 戦艦の数で3倍、空母の数だと実に9倍もの差があるという、アジア艦隊からすればまさに詰みゲーといった

状況だった。

 勿論、そんなことを知る由も無いハートは必死にアジア艦隊をハワイに脱出させようと努力していた。

 彼は日本海軍がどこに潜んでいるかを探るべく、虎の子のドーントレス12機を偵察に出した。ただし12機

だけでは効果が薄いとして、各艦が搭載している水上機も偵察に出した。


「日本艦隊がいなければ良いんだが……」


 ハワイに無事にたどり着くためには、日本艦隊と遭遇しないことが一番良い。

 しかしながら、日本艦隊と一戦も交えることなくハワイにたどり着けると考えるほど、ハートは楽観的な

考えに浸ることはできなかった。


「しかし敵に空母がいたら、史上初の空母決戦になるな……しかしこうも航空機の性能が開いていては」


 ハートは可能な限り戦闘はさけるつもりだった。偵察機を出したのも、可能な限り敵の位置を掴み、戦闘を

避けるために過ぎない。

 だが彼の努力もむなしく、アジア艦隊は第3艦隊によって先に発見されることになる。


『われ敵艦隊発見。敵は一群の輪形陣。1隻の空母を中核とする。外周に戦艦4隻、重巡洋艦2、軽巡洋艦3

 駆逐艦多数を伴う。味方よりの方位12。針路80。速度20』


 偵察機からの報告を聞いた小沢は直ちに航空隊を出撃させる。


「第一次攻撃隊は敵空母と敵の護衛部隊を排除。第二次で敵戦艦を叩く」


 日本海軍にとって最優先で叩くべきは空母であり、次に巡洋艦以下の艦艇であった。戦艦を撃沈することもできるが

沈みにくい上に、分厚い護衛に囲まれた戦艦を撃沈するのは手間がかかりすぎる。故に日本海軍上層部は戦艦は余裕が

できたら撃沈するように命じていた。

 勿論、航空主兵論者の中には、これに反発し戦艦を航空機のみで撃沈することで大艦巨砲主義の終焉を知らしめようと

目論む人間も少なくなかった。特に艦攻乗りだった者は、魚雷を大物にぶち込みたいという願望が強かった。


「搭乗員の中には不満を漏らす者もいますが……」

「ふむ……」


 小沢は少しの間、考える。


「最優先は空母。次に巡洋艦以下の艦艇だが、余裕があれば戦艦を攻撃しても構わん。

 それに800キロ爆弾を巡洋艦に使うのは勿体無いからな。判断については現地指揮官の裁量に任せる」


 この言葉が伝えられると、搭乗員達は色めき立った。

 第一波攻撃隊の流星は60機が爆装、70機が雷装。残り30機が対艦ロケットを搭載していた。そして爆装して

いる60機のうち20機が戦艦殺しともいうべき800キロ爆弾を搭載していた。

 史実同様、長門の主砲弾を改造して作られたこの爆弾は、対艦攻撃の切り札であった。

 800キロ爆弾は最優先攻撃目標である空母に叩き込むことが決まっていたが、あまれば戦艦を攻撃してもよいと

言われて彼らは大いに士気をあげた。


「頼みます、江草少佐!!」


 搭乗員達は艦爆の神様といわれた江草は、搭乗員達の頼みを快く引き受ける。


「任せておけ!」


 第一波攻撃隊として小沢が出したのは、実に280機に及ぶ。艦戦(烈風)120機、艦攻(流星)160機から

なる一大攻撃隊はアジア艦隊に向けて殺到した。

 一方のアジア艦隊側も幸運にも、第3艦隊を発見することに成功した。尤もそのときにはすでに攻撃隊が発艦して

おり、ハートが望んだ戦闘回避の道は絶たれていたが。


「……航空参謀、ヨークタウンから攻撃隊を出す」

「し、しかし相手は空母6隻。数が違いすぎます。自殺行為です」

「だがやらねばならん。それに、このまま後生大事にとっておいても空母ごと沈められるだけだ」

「……判りました」

「それと、攻撃隊に護衛はつけれない。手持ちのF4Fはすべて艦隊の直掩に回す」

「ま、丸裸で攻撃隊を送り出すというのですか!!」

「日本軍の攻撃を防ぐためには、1機でも多くの戦闘機がいる。我々は可能な限り艦隊を保全しなければ

 ならないのだ。来るべき決戦のために」


 しかし彼は知らない。彼我の実力差が隔絶しているのは航空戦力だけではなく、レーダー、対空火器などあらゆる

分野に及ぶことを。彼はそれを嫌と言うほど思い知ることになる。




 高い練度を誇る第3艦隊航空隊は、一丸となってアジア艦隊の上空にたどり着いた。

 上空で待機していたワイルドキャットが、日本軍機に襲い掛かり、熾烈な航空戦が起こる。性能、搭乗員の質共に

日本軍が圧倒していたが、後が無いゆえに必死の米軍パイロットは我武者羅に烈風に食いついていく。

 だがその隙をつくように、流星と30機ほどの烈風がアジア艦隊に向けて突進していく。


「撃ち方はじめ!」


 ハートの命令と共にアジア艦隊全艦が火を噴いた。しかしそれを嘲笑うかのように日本軍機は接近する。

 そして彼らは、ハートたちが予期もしない方法で攻撃を開始した。


「敵機、ロケットを発射!」


 烈風は搭載したロケット弾を輪陣形外周部右舷に展開していた駆逐艦や軽巡洋艦に向けて次々に発射した。

 無誘導であったものの、弾道が安定していたこと、さらに1機あたり8発も搭載されていたために少なく

ない数のロケット弾が命中していった。


「ダメージレポート!!」


 被弾した艦の艦長たちは慌てて対応した。威力こそ高くは無いが、対空火器に少なからざる被害が生じて

しまい、対空砲火に穴が開く。これに拍車をかけるように20機ほどの流星が対艦ロケットを撃ち込む。

 烈風が搭載していたロケットは8発であったが、流星はそれを上回る12発。命中率が悪いとは言え

すでに被弾し、対空能力が低下している艦に、流星の攻撃を防ぐ力はなかった。

 これによって4隻の駆逐艦が上部構造物に少なからざる打撃を受け、沈黙していった。軽巡洋艦ボイスは

駆逐艦が落伍した穴を埋めるべく奮戦するが、爆装した烈風が250キロ爆弾を浴びせると、爆発炎上して

落伍していった。これによって陣形に穴が開く。

 それに付け入るように多数の流星が輪形陣内部に侵入した。


「敵機が速過ぎる!!」



 敵機の進入を許したとの報告から、輪形陣内部の重巡洋艦や戦艦は流星に砲口を向けた。

 だが流星の最高速度は実に553キロ。仮に魚雷を抱えたとしても、米国の誇る新型雷撃機アベンジャーより

遥かに高速で飛ぶことが出来る。まして旧来の雷撃機であるデバステーターなど比較にすらならない。

 このためアジア艦隊の対空要員は必死に流星を狙ったが、普段の訓練で的にしている味方機よりも、遥かに

高速で俊敏な流星を捉えることはできなかった。

 しかし彼らにとって災厄は海を這うように接近する流星だけではなかった。


「敵機、急降下!!」


 空母ヨークタウンの上空に進入した流星12機が、空母めがけて急降下爆撃を仕掛けた。

 隊の指揮を取るのは急降下爆撃の名人と名高い江草隆繁少佐。彼率いる爆撃隊は周囲の艦艇が必死に打ち上げる

対空砲火をものともせずに突っ込んでいく。

 ヨークタウンは最大戦速の32.5ノットでジグザクに疾走したが、彼らから逃れることはできなかった。

 12機の流星はつぶてのようにまっしぐらに降下してきると、1機あたり2発の800キロ爆弾を投下して、艦橋を

かすめて急上昇した。

 対空砲火の照準も間に合わない速度で行われた攻撃によって、ヨークタウンは6発もの800キロ爆弾を受けた。

飛行甲板に3発、艦橋の真後ろに1発、艦首と艦尾に1発ずつ。いくらダメージコントロールに長けた米軍空母とは

言え、この短時間の間に6発もの800キロ爆弾を浴びることは想定していなかった。

 艦の内部は一瞬でズタズタに破壊され、艦の機能は殆ど停止。さらに艦底からの浸水さえ始まった。


「ヨークタウンが!?」


 オクラホマの艦橋で様子を見ていたハートは絶句した。戦闘開始から15分も経たないうちに、アジア艦隊唯一の

空母が艦のあちこちから火を噴き出している。その光景は信じられないものであった。


「日本軍機の搭載する爆弾は、恐らく2000ポンドはあるかと。あれの直撃を受けては……」


 参謀達もヨークタウンの惨状に思わず目を伏せる。しかし悲劇はそれだけに留まらない。

 火達磨になったヨークタウンにトドメを刺すべく、魚雷を装備した流星が殺到したのだ。流星のスピードに

対応しきれないのか、米艦艇の放った対空砲はすべて流星から大きく離れた位置で炸裂する。

 流星はそのスピードで左右両方からヨークタウンに突進する。ヨークタウンは必死に舵を切るが、先ほどの

被弾のせいもあって動きが鈍い。鈍重な空母めがけて、日本軍は容赦なく魚雷を投下していった。

 艦のいたるところから火を噴き、もはや浮かぶスクラップ当然となったヨークタウンに、実に8発もの魚雷が

命中した。ヨークタウンは総員退艦を命じる余裕すら与えられず、その艦体を海底に引きずり込まれていく。


「戦闘を開始して15分、たった15分で、2万トンもの排水量を持つ空母が……」


 唖然となる幕僚達。しかし日本軍の攻撃はまだ終了していない。

 重巡洋艦ヒューストンが魚雷2発を受けて落伍した直後、アリゾナに向けて8機の流星が急降下爆撃を敢行し

5発もの800キロ爆弾が直撃した。長門の主砲弾を改造して作られたこの爆弾は、アリゾナの装甲を貫いて

艦の内部で炸裂した。しかもその際に副砲の弾薬庫が誘爆するという、米海軍にとって最悪の事態が発生した。


「ア、アリゾナが……」


 激しい閃光、そして轟音が鳴り響く。オクラホマの艦橋にいたハートが慌ててアリゾナが航行していた場所を

見ると、そこにはくの字に折れて沈み行くアリゾナの姿があった。


「せ、戦艦が航空機に、それも日本人の航空機に撃沈されるなんて……」


 これまでの海軍の常識をひっくり返す光景に誰もがショックを隠しきれない。

 しかしそんな彼らの心境を考慮してやるほど、日本軍は甘くは無かった。アリゾナ沈没後、ネバタが魚雷2発を

受けて速度を落とし、ペンシルベニアは500キロ爆弾の直撃を受けて火災を起こした。


「このままではなぶり殺しだ……」


 日本軍機の攻撃は苛烈を極め、巡洋艦、駆逐艦にも次々に魚雷を、爆弾を、ロケット弾を叩きつけた。さらに直掩機を

排除し終わった烈風が相次いで降下し、機銃掃射まで浴びせていく。

 旗艦であるオクラホマも3発の命中弾を受けて、第1砲塔が大破。さらに高角砲座をはじめ多くの艦上構造物を破壊

されてしまった。

 第一波攻撃隊が引き上げたあとには、オクラホマを含む戦艦3隻、軽巡洋艦1隻、駆逐艦13隻にまで艦隊の数は

激減していた。

 そして残された艦艇も大なり小なり被害を受けており、もはや全滅寸前といっても過言ではない状態であった。


「たった一回、たった一回の攻撃で、我が艦隊が……」


 あまりの惨状にハートは絶句する。


(スティルウェル将軍も、私と同じような目に合ったのだろうか……)


 だが彼の思考は、次の報告によってすぐに現実に引き戻された。


「北より敵機多数接近!!」

「何?! まだ敵の空母部隊がいたのか?!」


 慌てて双眼鏡で空を見たハートは絶句した。そこには確かに日本軍機の姿があった。先ほどよりは数は

少ないが日本軍機の実力を考慮すれば、どんな被害がでるかは考えるまでもない。


(敵の姿を見ることも無く、全滅するかも知れんな。これが新しい戦争のやり方か)


 彼らが見た新たな日本軍攻撃隊は、第1艦隊から発進した攻撃隊だった。第3艦隊に比べれば、明らかに数が

少ないものであったが、それでも70機もの航空隊が、ボロボロのアジア艦隊に襲い掛かる。

 そのころ、アジア艦隊から発進した攻撃隊は、第3艦隊の鉄壁の防空網の洗礼を受けていた。

 BOBの情報から日本がレーダーを保有していることがわかっていたため、ヨークタウンの航空隊はレーダーを

避けるために超低空で日本艦隊に接近する方法をとっていた。

 このため、ある程度は第3艦隊の目をかいくぐることに成功したのだが、それも艦隊に近づくにつれて不可能と

なった。

 発見された32機の攻撃隊は、50機もの直掩機の攻撃を受けた。動きが遅いデバステーターなどは真っ先に

撃墜された。米軍の雷撃機としては高性能なアベンジャーも、烈風の攻撃を掻い潜ることはできず、全滅した。

 残されたドーントレス8機は何とか烈風の迎撃網を掻い潜り、第3艦隊上空にたどり着いたのだが、そこで

待ち受けていたのは、炎の壁といってもよい分厚い弾幕の洗礼であった。


「駄目だ、近づけない!!」

「畜生、なんて火力だ!」


 太平洋戦争末期の米機動部隊をモデルとして構築された第3艦隊。故に第3艦隊の対空砲火は苛烈を極めた。

 特に対空能力を強化された最上型軽巡洋艦と利根型軽巡洋艦は比類なき強さを見せ付けた。最上型軽巡洋艦は

対空射撃にも用いることが出来る15.2センチ自動砲を装備し、12.7センチ高角砲を12門も積み込んで

いる。一方の利根型は40mm機銃の代わりに新開発された7.6センチ速射砲まで搭載していた。

 VT信管こそないものの、それでも史実米軍に準ずるほどの弾幕を張ることができた。史実の米軍を参考に

して編成された艦隊が、この世界の米軍を苦しめていた。

 尤も相手が強大だからと言って引き下がるほど米軍のパイロットは弱兵ではなかった。彼らはこの炎の壁を

必死に乗り越え、日本海軍に一矢でも報いようとした。


「勇敢な連中だ」


 小沢は僚機の大半を撃墜されても尚、攻撃をやめようとしない米軍機搭乗員に驚きを隠せない。

 山口もこれに同意する。


「しかし無謀です」


 8機のドーントレスは、何とか飛龍に向けて急降下爆撃を敢行しようとしたものの、4機が投下前に

対空砲火に捕われ撃墜される。残り4機が何とか投弾に成功するが、すべて回避されてしまう。

 そして残された4機は離脱しようとする中、駆けつけた烈風によって袋叩きにされて撃墜された。


「よし、第一次攻撃隊の収容を急げ。第三次攻撃隊の準備を進める」


 アジア艦隊の反撃を一蹴すると、小沢はさらなる攻撃を加えるべく準備を進めさせた。

 しかしその必要がないことがすぐに明らかになる。

 第二波攻撃隊である170機がアジア艦隊に到着すると、そこには炎上中の2隻の戦艦と10隻の駆逐艦の

姿があった。


「誰か抜け駆けしたのか?」


 しかし彼らがやることに変わりは無い。残された艦をすべて漁礁に変えるだけだ。

 一方、もはや全滅一歩寸前にまで追い詰められたアジア艦隊の米海軍将兵は、新たな攻撃隊の登場を見て

絶望に捕われた。ハートは絶望と諦観の入り混じった顔で呟いた。


「もはや、これまでか……」


 彼の座乗するオクラホマは、第1艦隊航空隊の攻撃のせいで、最大でも14ノットしか出せない。

 さらに舵も破壊されており、直進することしかできない状態だ。最初は囮になって他の艦を逃がすことも

考えたが目の前の大編隊をすべて吸引できるとは思えなかった。しかし何もしないわけにはいかない。


「……オクラホマとペンシルバニアで敵を吸引する。その隙に残った駆逐艦をフィリピンに後退させる」

「スティルウェル将軍はどうされますか?」

「閣下には脱出してもらい、あとで潜水艦に拾ってもらう。退艦準備をしてもらえ」

「了解しました」


 伝令が走り去っていくのを見た後、ハートは幕僚達に必要な指示を出す。

 そして一通り指示が終わると小さな声で呟いた。


「それにしても、日本海軍がここまで強かったとは……願わくば、万全の状態で戦いたかった」


 確かに日米の実力差は隔絶していた。日本海軍は攻撃力だけではなく、防御力も強大だった。

 自分が丸裸で放った攻撃隊は攻撃には失敗したものの、日本海軍が如何に手早く攻撃隊に対処したか

そして空母部隊に対空能力に秀でた巡洋艦が多数配備されていることなどを詳細に報告していたのだ。

 空母の集中運用、優秀な航空機、空襲から空母を守るのに秀でた新型巡洋艦。そのどれもが日本海軍が

アメリカ海軍よりも進んでいることを示していた。

 勿論、アメリカがその総力を挙げれば、この劣勢を覆すことも不可能ではなかっただろう。

 しかしその可能性は津波によって、儚く消え去ったばかりか、現状の戦力でさえ十二分に発揮できなくなった。


「敵機急降下!!」


 幕僚達が顔をひきつらせる中、ハートはため息をついて、この世で最後の言葉を口にした。


「……キンメル、後を頼む」


 この直後、流星が投下した800キロ爆弾がオクラホマの艦橋を吹き飛ばし、そこにいたハート大将以下の

アジア艦隊司令部の幕僚達を全滅させた。

 その後、さらに800キロ爆弾2発を受け、トドメに魚雷4発を左舷に受けたオクラホマは、あっという間に

沈んでいった。

 その後の執拗な攻撃を受け、アジア艦隊の水上艦艇は駆逐艦2隻を除いて、このフィリピン沖で文字通り

全滅した。戦艦4隻、重巡洋艦2隻、軽巡洋艦3隻を中心とした大艦隊が航空機の攻撃で全滅したことは

世界各国を驚愕させることになる。





 アジア艦隊がフィリピン沖で全滅したことは、即座に日本政府の手によって大きく喧伝された。

 ガーナーはアジア艦隊の全滅に激怒し、英国政府は恐るべき日本の空母部隊が自国に向けられることを恐れた。

そして現時点で日本と戦い、劣勢を強いられている中華民国では、米国を見限る動きが加速していった。

 しかし米国を見限り、日本側に寝返るならば、何らかの手土産が必要となる。

 彼らは反日政策を掲げ、この戦争を画策した張学良を生贄にすることを目論んだ。勿論、それに気付かない

ほど張学良は無能ではなかった。尤も気付いたからと言って対応策はなかったが。


「くそ、くそ、くそ!!」


 北京の執務室で、張学良は頭を抱え、ひたすら憎き日本を、不甲斐無い米国を、そして自分を裏切ろうと

している部下達を罵倒した。そうすることしか出来なかった。


「何故だ、何故、我々がここまで追い詰められなければならないのだ! 追い詰められるべきは日帝だ!!」


 勿論、原因はわかっている。大西洋で起きた巨大津波のせいだ。

 あの大災害は、アメリカを半壊させた。確かに日本は手強いが、長期戦になれば十分に勝ち目はあった。

しかし今や、長期戦になって負けるのは他ならぬアメリカであった。

 そして後ろ盾となったアメリカが敗北するようなことになれば、張学良は失脚する。いや単に失脚して

権力を失うだけならまだ良いほうだろう。このままでは高い確率で、生贄として、日本に引き渡されるか

身内によって処刑されるかになる。


「くっ、こうなればアメリカが短期決戦で勝利することを願うしかない。太平洋艦隊と大西洋艦隊が合流すれば

 まだ勝ち目はある!! それまで何としても体制を維持しなければ!!」


 日本軍によって沿岸と主要都市を押さえられたせいで、中華民国の経済活動は甚大な被害を被っていた。

加えて張学良の虎の子であった正規軍主力が満州で壊滅したために、軍内部での勢力バランスが崩れて

しまい、彼の権勢は危ういものになっていた。


「こうなれば、搾り取れるところから搾り取って、軍備を再建しなければ……」


 しかしその彼をさらに追い詰める事態が起こる。

 そう、かつて上海攻防戦で中華民国軍兵士が、裏切った上に、その時に租界にいたアメリカの民間人を

虐殺したことが明らかにされたのだ。

 これによって中華民国の信頼と信用は完全に失墜することになる。そしてそれは中華民国の終わりの

始まりを意味するものであった。








 あとがき

 提督たちの憂鬱第31話をお送りしました。

 やはり戦闘シーンは難しい。世の中の仮想戦記で海戦ものを書いている人は偉大だということが

 よく判ります。なかなか、あそこまでうまく書けません。

 さて、アジア艦隊は航空戦力によってほぼ全滅しました。まぁ800キロ爆弾2発を抱えて急降下できる

 機体が何百機もいたら目も当てられないでしょうけど……やりすぎたかな(汗)。

 本当は艦隊決戦もやろうと思っていたんですが、お流れになりました。太平洋艦隊との決戦ではきっちり

 戦艦同士の砲撃戦をするつもりです。

 それでは拙作にも関わらず最後まで読んでくださりありがとうございました。

 提督たちの憂鬱第32話でお会いしましょう。

 あと、今回採用させていただいた兵器のスペックです。







最上型軽巡洋艦
基準排水量=公称10,000t(実際は11,500t)
全長=189m 全幅=21.2m
主機出力=オールギヤードタービン2基2軸・84,000HP
最大速力=30kt   航続距離=18kt/8,000海里
武装
50口径15.2cm自動砲 連装4基
40口径12.7cm両用砲  2連装6基(砲塔式、米クリーブランド型と同配置)
40mm機銃         2連装6基(両舷3基)
20mm機銃         2連装10基
舷側装甲-主装甲帯100mm 甲板装甲50mm
砲塔装甲-前楯160mm 側面76mm 天蓋76mm




利根型軽巡洋艦
基準排水量=公称10,000t
全長=189m 全幅=21.2m
主機出力=オールギヤードタービン4基4軸・152,000HP
最大速力=34.5kt   航続距離=18kt/8,000海里
武装
50口径15.2cm3連装砲  3基(前部2基 後部1基)
40口径12.7cm両用砲  2連装6基(砲塔式、米クリーブランド型と同配置)
魚雷発射菅      4連装4基
50口径7.6cm速射砲   単装砲6基(両舷3基)
20mm機銃       2連装10基
舷側装甲-主装甲帯100mm 甲板装甲50mm(舷側部分は65mm傾斜装甲)
砲塔装甲-前楯25mm 側面25mm 天蓋25mm





潜高2型潜水艦「呂二一型潜水艦」
基準排水量:1,800t
全長:85.00m
全幅:8.00m
安全潜行深度:150m
船体形状:葉巻型
船体構造:複殻式
主機関:艦本式22号10型ディーゼル2基、2軸推進
水上時
・機関出力:4,250馬力
・最大速力:17.0ノット
・航続距離:16ノットで9,200浬
水中時
・機関出力:5,000馬力
・最大速力:19.5ノット
・航続距離:6ノットで300浬
武装
・20mm単装機銃3基3門【艦橋部1基、前後部引き込み式各1基】
・53.3cm魚雷発射管6基【艦首に6基】
魚雷搭載数:24本
機雷搭載数:24個
付属:対空対水上電探、シュノーケル、自動装填装置、硬質ゴム製無反響タイル




<流星>零式艦上攻撃機(陸軍名:<飛龍>百式爆撃機)
全長:11.8m 全高:4.8m 全幅:15m
最高速度:553km 航続距離:2100km 上昇限度:8千m
自重:4770kg 乗員:1名(複座型も存在)
エンジン:<栄>空冷エンジン2200馬力
武装:20mm機関砲×2(陸軍用は20mm機関砲×4)、
   12.7mm機銃×1(複座型のみ後部機銃に設置)、
   爆弾2トン(または魚雷×1、対地・対艦ロケット弾12発)