カリフォルニア共和国。
 今は亡きアメリカ合衆国の精神面での継承者とされるこの国は、他の北米地域よりも平和と安定を享受していた。
 軍事的には北米防疫線から距離が離れていることに加え、今村陸軍大将が指揮する遣米軍がその本拠を置いていること、経済的には日本との交易を北米諸国の中で最も早く再開できたことがカリフォルニア共和国の今を作っている。
 ただカリフォルニア国民の中には、有色人種である日本人に頭を下げざるを得ない状況に鬱屈とした思いを抱く者も少なくなかった。戦前であれば、問題にされなかった日系人への差別も、現在では御法度だった。それどころか戦前に(少数の)日系人を露骨に差別してきた者たちの中には、日本の威光を利用して日系人が復讐にくるとさえ思い怯える者さえいる始末だった。
  ただし幸いなことに、日系人による復讐は少なく、社会問題にならなかった。日本政府はカリフォルニア共和国の立場を擁護し、日系人であっても現在の法律に触れる行いをした人間は犯罪者として厳正に処罰することを促していた。

「虎の威を借る狐を野放しにしてはならない」

 今村大将もそう公言し、日本人(軍人、民間人問わず)並びに日系人による犯罪については気を配っていた。カリフォルニア共和国は西海岸の要であり、日本の北米大陸への橋頭堡の一つ。それを自分で不安定化させるなど馬鹿がすることなのだ。
 日本側が旧自由ポーランド軍や旧自由フランス軍を活用していたこともあり、各地の摩擦は最小限に食い止められた。そんな日本側の配慮があってもなお、西海岸の白人たちの脳裏には屈折した思いがよぎる。
 だが日本人に対して何かしら思うところがあっても、それを行動に移すことが愚かであることも彼らはよく理解していた。
 少なくとも日本政府はメキシコの暴挙からカリフォルニアを守ろうと出兵し、カリフォルニアを安定させるために医薬品を同盟国価格で提供している。そして戦前よりは多少苦しくなったが、日本の後援によってカリフォルニア共和国市民の文明的な生活を維持されている。そして幾ら叩いても、文句を言われることがない『不満のはけ口』も存在する。これらを考えれば、テキサスによって制圧された地域よりは遥かに良い環境だ。
 テキサスと欧州枢軸軍によって制圧された地域は、半ば植民地同然の扱いであり、現地の資源や労働力は欧州諸国によって徹底的に安く買い上げられている。一部の人間は民兵として抵抗したが、欧州枢軸軍(正確にはドイツ軍)とその後押しを受けたテキサス軍を押し返すことはできなかった。

「抵抗する人間は容赦するな。奴らは防疫線の破壊を目論む『人類の敵』だからな」

 テキサス陸軍中将ダールキストは、そう言って不穏分子の徹底した掃討を命じ、各地で死体の山を築いていた。
 そして持ち主がいなくなった土地や建物は次々にテキサス共和国に接収され……少なくない土地が新たな荘園を欲する貴族の手に渡ることになった。
 ロッキー山脈の向こう側で繰り広げられる数々の血生臭い惨劇の数々は西部の住民たちの知るところとなっており、彼らの危機感を煽っていた。

「カリフォルニア人の生命と財産を守るためには、奴隷制を復活させるような南部の亡霊共に屈する訳にはいかない」

 カリフォルニア共和国議会で議員たちはそう主張しており、市民もおおむねそれを支持している。
 白人のプライドを守って『今の』生活を捨てるか、日本人に阿って衣食住が保障される『人間の生活』を送るか……今のところ、市民の答えは後者だった。
 そのことを一番よく理解しているのがハーストだった。かつて金のために戦争を煽り、金のために祖国を割いて売りとばそうとした売国奴であるが故に、何をすれば自分の金になるのか、自分の懐を温かくできるかをよく理解していた。
 彼はカリフォルニア共和国初代大統領アール・ウォーレンと旧米財界、軍部の間の関係を取り持ち、戦時中に築いた日本側とのコネクションを活かして様々な活動を精力的に行っている。ハーストを快く思っていない者たちでさえハーストの働きを認めざるを得ないのだから、彼がいかに馬車馬の如く働き、結果を残しているかがわかる。
 そんなハーストにとって、環太平洋諸国会議は重視すべき催し物であった。

「日本は我々を友人として招くといっているが、実際には日本の権勢を示すための儀式と考えたほうが良いな。ならば彼らの意向に沿ってやるのが良いだろう」

 自宅の書斎でグラスに注がれたウィスキー(通称カリフォルニア・バーボン)の香りを楽しみつつ、ハーストは国際会議に思いをはせる。
 外務省は主に『外交』の復活を喧伝するつもりでいたのだが、欧州や北米ではむしろ『日本が己の権勢を諸外国に見せつけるための会議』と捉える者が多かった。
 ヒトラーは当然、その考えを抱いており、日本に軽く恥をかかせるために韓国を利用するつもりだった。片やハーストは、ヒトラーと同様の判断を下しつつも如何に日本の意に沿って行動し、日本から更なる支援(勿論、支援によって得られた成果の一部は自分の懐に入れるつもり)を引き出すかに腐心していた。

(幸い、私は日本語をある程度習得した。直接、彼らと折衝することもできるだろう)

 彼の書斎には日本語の単語帳や文法を記した書物が大量に置かれていた。彼は売国奴と言われる類の男であったが、金のためならあらゆる努力を惜しまない男だった。
 まぁ普段の激務に加え、日本語の勉強も並行して行うのだから、彼の疲労は相当なものだった。故に彼は高級ウィスキーで疲れを癒すのだ。

(ふっ、財界と協力して、ウィスキー職人とその設備を西海岸に移して正解だったな。これだけの品質なら輸出しても問題ない。カリフォルニアの特産品を売り込めればいろいろと利益になる……いや、国際会議の期間中、各国に振舞うのも良いだろう。我が国が日本に守ってもらうだけの国ではなく、何かを生み出せる国、貢献できる国であることを示す好機だ。しかし白人国家が、ここまで有色人種を阿る立場になるとは……全く、戦前は予想もしていなかったな)

 金のためなら何でもする男であったが、有色人種のご機嫌をとるのはそれなりに疲れるのだ。

(まぁ良い。カリフォルニアが豊かであれば、市民も私、いや我々を支持して権力基盤も盤石となる。同時に私の懐も潤う。市民も実利が得られるなら多少の不都合には目を瞑るだろう……まぁ煩い人間もいる。欧州列強の政策を参考に、宣伝工作を強化することも重要か……御用達の学者を用意する必要があるな)

 有色人種に圧倒されているという現実を受け入れたくない者たちの中には、日本人を有色人種のカテゴリーから外す者が多い。
 イラン演習でショックを受けていたナチスドイツではハンス・ギュンターなどの御用学者達が必死になって、ナチスの教義を守るために理屈を捏ねていた。何しろ戦前、あれだけ悪し様に日本人を貶していたにも関わらず、その日本人相手に大きく後れを取っているのだ。何とか言い訳を考えなければ、ナチスの立場がない。
 もちろん、ハーストも戦前から戦中にかけて自身の新聞社を使ってあれだけ反日を煽っていたが……それらの責任はすべて旧連邦政府と共産主義者に擦り付けていた。

「唾棄すべき共産主義者が旧連邦政府に入り込み、戦争を煽り立てた」
「戦争中は、自分の地位と権力しか考えていない愚かな暫定政府が報道機関関係者を脅して継戦を煽り立てた」

 などなど、事情を知る人間からすれば突っ込みどころ満載の言い訳でハーストは切り抜けた。日本側も「こいつは……」と呆れていたものの、ハーストに利用価値があると判断していたため、ハーストの責任を追及することはなかった。近衛などは「文屋が『アレ』なのは日米変わらずか」などと嘆息していたが……。

「まぁ、今はこの酒を楽しむとしよう。ビジネスマンには公私の切り替えが重要だからな」

 ハーストはそう言って気分を切り替えると、ウィスキーを呷った。




             提督たちの憂鬱外伝 戦後編22




 夢幻会にとって環太平洋諸国会議は『本来の外交』の復活に向けての第一歩であった。
 表向き、根っからの対外強硬派と思われている嶋田も、『本来の外交』の復活を望んで、この会議を後押しした。

「戦争は外交の延長だよ。米支が相手だったときのように交渉で解決できないなら当然、戦う必要がある。だが、相手が話し合いを求めるなら交渉の席につく」
「大西洋津波の影響はまだ大きい。この困難を乗り越えるためには、友好国との相互理解が必要だ。この国際会議は相互理解の場となるだろう」
「皇軍は確かに切れ味がよい名刀だ。だがいくら名刀でも、無暗にものを切れば刃こぼれもする。刀を抜くのは状況をよく吟味してからだ」

 嶋田は軍(特に海軍)の精強さを称えつつ、『外交交渉』の必要性、そして国際会議の意義を世論に訴えた。片や諸外国は『日本の権勢を見せつける為の催し物』と捉えていた。
 報告を聞いたヒトラーは総統官邸の執務室で地球儀に右手をつけて「属国を集めた会議で外交の復活? 日本人には冗談の才能がないな」と言い放ち、唇をゆがめる。そしてそれを見た秘書マルティン・ボルマンはすかさず追従した。

「総統閣下のおっしゃる通りです。何か謀を進めるにしても、もう少しまともなお題目を掲げればよいものを」
「うむ。日本の金と力で独立国家の真似事をしている元植民地人が宗主国と対等に交渉する場。全く大した茶番だ。インド亜大陸や中国大陸を見れば、有色人種が近代国家を作る能力などないことがわかるだろうに」

 インド、中国の混乱と現地の惨状はヒトラーもある程度知っていた。
 故にヒトラーは有色人種の大半は独力で近代国家を作るまで進化していないという考えを強めていた。

「操り人形を集めての人形劇か……ふん、我々への当て擦りも狙っているのかも知れん」

 一般のドイツ人のうち、少なくない人間がヒトラーと同様の思いを抱いたのは偶然ではない。
 何しろ、ドイツは日本と違って勢力圏に収めた地域から富の収奪を続けていた。それも、現地の事情を知れば多くの人間が鼻白むほどの規模で。日本とドイツの関係を悪化させているのもそうした政策が要因の一つとなっているのだが、ヒトラーは今の政策を転換するつもりなどなかった。

「優秀なアーリア民族は、他民族を踏みにじってでも生き残る権利がある!」

 ヒトラーはそう演説してドイツの行動を正当化し、ドイツ国民は自分たちにパンを与えてくれるナチスを支持した。
 ただ彼らはパンを与えてくれるだけでナチスを支持している訳でもなかった。少なくともドイツ国民はナチスがこれまでに立てた功績も評価していた。

「もしもナチスが政権を握れず、ワイマール共和国のままだったら……イギリス人やフランス人が津波からの復興のためと称して、弱体なドイツに何をしていたか」
「そもそも共産主義者が蜂起して赤化していたかも知れない。いやソ連が絶好の好機とみて襲い掛かってきただろう」
「武力によってベルサイユ体制を打破できたからこそ、ドイツの今の地位がある」

 先の大戦での敗北以来、英仏によって押さえつけられてきた時代を知る一般市民の間で、そのような声が挙がっていた。
 日本が武力で米中による包囲網を打ち破って躍進したように、結果だけを見るならヒトラーの指導の下、ドイツも武力を用いて先の大戦によって構築されたベルサイユ体制を打破して躍進したと言ってもよいのだ。それはナチスに対する支持を集めるには十分だった。
 イラン演習での完敗を聞いて一時動揺が広がったものの、最終的には日本に対抗できる軍備(特に空軍)の整備を約束したヒトラーを国民は支持した。
 そして、ヒトラーはその支持を背景にして、東欧における民族浄化と再開発計画(主に食糧や資源の獲得が目的)を加速させることを指示していた。このヒトラーの意を汲んだ労働力配置総監フリッツ・ザウケルは各地の占領地から徴用した多くの住民たちに強制労働を強いて再開発計画を進めている。当然、多大な 犠牲が生まれていたものの「東方生存圏を作り上げ、ドイツが資源と食糧を自給できるようにする」というヒトラーの悲願のためなら、多少の犠牲は許容された。
 同時にヒトラーは自国勢力圏に組み込んだ黒海沿岸にある旧ソ連の造船所を利用した海軍力の拡張を目論み、必要な技術者を派遣していた。日本の前にイギリスを打倒しなければならないと考えているヒトラーにとって、設備が古いとはいえ、大西洋大津波の被害を受けていない造船所は貴重だったのだ。
 ドイツに続くように、フランスも軍の再編と増強を進めていた。
 当初は某八八艦隊計画のように、国力を無視した軍拡を目論んでいたフランスであったが、復興という大事業を受けて大幅な下方修正を行っていた。ただしそれは海軍の拡張をしないという訳ではない。彼らはイギリスへの復讐を誓っており、その牙を研ぐことを怠るつもりはなかった。
 フランス海軍は旧米海軍のエセックス級の思想を引き継いだ独自の空母設計や、戦前の国内経済の悪化で建造が遅れに遅れ、結果として完成直前に津波で造船所ごと大損害を被ったダンケルク級二番艦『ストラスブール』の修復、そして日米戦争の戦訓を取り入れた新型戦艦の設計を進めるなど、出来る限りの手を打っていた。
 フランス空軍は、BOBでドイツ軍がイギリス空軍を打ち破り、ロンドンに大打撃を与えたのに影響され、防御より攻撃に重きを置いた戦略を練っていた。
 ただ彼らの『攻撃』というものに、現在開発中の新型毒ガス兵器を用いた無差別攻撃があるというのが大問題でもあった。ヒトラーでも最後まで決断できなかった毒ガスの使用。しかしながら彼らは躊躇いを覚えていなかったのだ。むしろ必要ならロンドンに容赦なく毒ガスを散布するつもりでいた。
 このような軍拡と並行し、フランスは本国の復興とアフリカの植民地開発を進めた。
 フランス政府はアルジェリアの開発に重点を置き、これを妨害する勢力を徹底的に叩き潰すつもりだった。この決意によって反抗した現地人(ベルベル人やアラブ系住民)は叩きのめされ、生き残った西アフリカの痩せた土地に追いやられることになった。当然、どの道中で多くの人間が倒れることになる。
 何より救いがないのは、大西洋大津波による被害が、現地住民であるベルベル人やアラブ系住民の間にも亀裂を入れていたことだ。現地人の仲たがい、フランス政府の政策、この2つが合わさって事態をより悲惨なものとした。
 何はともあれ、欧州枢軸主要国の多くは、植民地の弱者を情け容赦なく磨り潰すことで戦災と天災で体力をすり減らした国家の再建を進めていた。
 そんな中、先の大戦以来の仇敵である日本が、欧州諸国から譲渡された植民地を独立させた上、形式的な独立国家とした上で話し合いの場を設けると発表しているのだ。
 旧自由ポーランド、旧自由フランス残党のための自治領創設と併せて『ドイツに対する当て擦り』と勘繰らない人間がいない訳がなかった。
 そこまで勘繰らずとも、『強者の余裕を見せてつけている』と考え、不快な気分になる者は少なくなかった。
 特に世界恐慌後の日本の荒稼ぎを知る人間ほど、日本が綺麗ごとを唱えるたびに不快な気分となった。ヒトラーもそのひとりだ。

「戦前は世界から富をむしり取り、戦後は我が国と共産主義者共の対立を利用して、ソ連から金を搾り取る。それでいて、我々を非難して正義を名乗る。あのような吸血鬼のような連中に正義を名乗る資格などありますまい。我々を非難するなど片腹痛いというもの」

 失態続きのゲーリングは日本を批判する。このゲーリングの言葉をヒトラーは否定しない。かといってゲーリングの日本批判を長々と聞くつもりもなかった。

「……ゲーリング、君の言いたいことはわかるが、君にはここで日本を批判するよりやるべき仕事があるはずだ」
「は、はい。目下、新型戦闘機の設計を行っている最中です」
「いつできる?」
「……今しばらくお待ちください。疾風が搭載しているような強力なエンジンの開発には時間が掛かります」

 ドイツの航空業界はその面子と威信にかけて、「打倒・疾風」を掲げて新型機の開発を進めている。
 イギリス人も疾風に衝撃を受けたが、ドイツが受けた衝撃はそれ以上だった。自分たちと日本人の間には信じられないほどの格差があると見せつけられたのだ。技術先進国の自負は木端微塵となった。しかしここで引き下がるような負け犬根性をドイツ人は持ち合わせていない。

「日本人に目にもの見せてくれる!」

 技術者たちはそう言って、研究開発に没頭した。
 彼らはジェットエンジンの改良を進めると同時に、疾風の写真を見て、疾風の機動力の秘密を探ろうとした。戦前では考えられなかった行為であるが、ここまで良いようにやられた後となっては、手段を選んではいられない。たとえ日本の猿真似と言われようが、日本の戦闘機に勝てる戦闘機を得ることが最優先だった。
 その中でもクルト・タンク博士はのちにTa183、「フッケバイン」との愛称で呼ばれる強力な新型ジェット機の開発に着手している。それはドイツの工業力が侮れない実力を持っていることの証左だった。しかし『今のところ』、新型機は完成していないのも事実。故にゲーリングの肩身は狭いままだった。
 ゲーリングから視線を外した後、ヒトラーは口の端を軽く吊り上げて己の策を再確認し、「問題ない」と判断した。

(これまで良いようにやられてきたが……夢幻会よ、貴様たちが長らく放置してきた連中を利用して、貴様たちに目のもの見せてやる)

 ヒトラーは今回の策のために旧白ロシア共和国に配備する予定の『部隊』の状況をヒムラーに確認した後、宣伝相ゲッペルスに厳命した。

「連中が肩を並べて戦っている姿を報道しろ。予定通り、『我々がすべての有色人種を迫害している訳ではないこと』を強調しろ。無暗に反独感情を煽り立てるようなことはするな。今、我々は連中とことを構えるわけにはいかん」

 忌々しく、そして認めたくないことに、今のドイツでは日本を相手に勝利することは難しい。
 仮に日本が本気でドイツを敵と見做せば、日英ソ三国同盟が成立するという最悪の事態も想定された。『現時点』でそれだけは回避しなければならない事態だった。

「判りました、総統閣下。有色人種であっても、功績や能力次第では十分な地位が得られることを喧伝いたします」
「吉報を期待している」





 独ソ停戦によって、両国は再戦のための準備期間が与えられた。特に崩壊寸前だったソ連にとって、停戦によって与えられた時間は貴重だった。
 だがドイツ軍によって占領された地域のロシア系、ユダヤ系住民にとっては、地獄の始まりだった。共産党が追い出された後に乗り込んできたのは、人種差別的イデオロギーに凝り固まったナチスドイツだったのだ。彼らの統治は共産党以上に過酷だった。
 白ロシア・ソビエト社会主義共和国。かつてソビエト連邦を構成していた有力な共和国の一つだったが、独ソ戦の結果、ドイツの統治下に置かれることとなった。
 首都ミンスクにはワルシャワのようにゲットーが造られ、周辺から集められた10万人以上のユダヤ人が放り込まれた。
 放り込まれたユダヤ人のうち、成人で健康な者はわずかな食糧と引き換えに強制労働を課され……強制労働に耐えきれない者については検挙された後、容赦なく銃殺された。
 ヒトラーは北米にユダヤ人を追放する政策を進めていたが、旧ソビエト圏のユダヤ人についてはその限りではなかった。ヒトラーからすれば共産主義者のユダヤ人など万死に値する存在だった。

「奴らは世界の敵だ。適切な処理を行うように」

 ヒトラーの命令を聞いたヒムラーは嬉々として『適切な処理』を進めていた。
 このドイツの政策に対し、ユダヤ系住民は反発。彼らはゲットーから逃れ、ゲリラ戦を挑んだ。ドイツの圧政に反発するほかの住民の支援も受け、彼らは死にもの狂いで抵抗していた。抵抗して殺されるか、痩せ衰えた後に死ぬかの二択である以上、彼らの抵抗は必然だった。
 これに対し、ドイツは保安警察と保安部によって結成されたアインザッツグルッペンを投入し、各地でユダヤ系住民の抵抗を圧殺した。このアインザッツグルッペンはドイツ人だけで構成されているわけではなく、ウクライナ人やラトビア人、リトアニア人など外国人も参加していた。
 彼らの多くは反ユダヤ主義であり、時にはドイツ人が引くような勢いでユダヤ人を殺していった。もともとアインザッツグルッペンの勤務を希望するドイツ人が多くないため、このような外国人の存在は有益だったが、ドイツ人が止めなければならないほどユダヤ人を殺そうとする時があるのが玉に瑕だった。
 ウクライナではウクライナ人が戦前の報復とばかりにロシア系住民が徹底的に冷遇されたため、ユダヤ系住民と併せて多くの死者が出ていた。当然ながら、ロシア系住民も反発して抵抗運動を行っていたが、ドイツを撤退させるには至らない。むしろロシア系住民の抵抗を口実にして更なる締め付けが行われ、それが更なる対立を生む悪循環に陥っている。
 そんな国家の台所事情に詳しい者にとって頭が痛い状態が続く旧ソ連領に、ヒトラーは親衛隊内に新たに発足した部隊を配備する準備を進めていた。
 片や、そんな旧ソ連領の情勢を含み笑いを浮かべて見つめる者が東方の果てにいた。

「『憎しみが憎しみを生む』とはこのことですね。我々にとったら実に結構と言えます。優良種のアーリア人と劣等種のスラブ人、ユダヤ人で不毛な殺し合いをつづけさせ、我々はその横で力を蓄えるとしましょう」

 料亭で開かれた会合の席で辻は満足げに手を叩く。
 もともと日本にとってソ連(ロシア)は本国を脅かす能力と意思を持ち得る警戒すべき国なのだ。そんな国とドイツが戦って互いに消耗しているのだから、辻にとっては笑いが止まらない。一方、杉山は顔をしかめる。

「しかし……見ていて気分が良いものではないな」

 彼は露骨にヒトラーの政策を批判しなかった。自分たちがヒトラーよりよほど外道な戦略で戦ったという自覚があるが故に。

「確かに。私も心が痛みます。正義の味方が出てくるような少年漫画だったら、この手の憎しみの連鎖を終わらせる、とかいう英雄気質の主人公が出てくるんでしょうが……」

 そこまで辻が言った直後、山本など一部の出席者から困惑が広がる。

「なぁ、嶋田」
「どうした、山本?」
「辻蔵相は少年漫画など読むのか? あんな例えをするということは読んでいると思うが……」

 山本の表情から「想像できん」という彼の考えを読み取ると、嶋田は「え、そこ?」と脱力する。
 夢幻会の他の人間も「辻が心を痛める? おまけに正義の味方が活躍する漫画を読む? 似合わないな」、「むしろあいつ自身が、漫画で主人公に打倒されるラスボスそのものだろう」、「辻が読む漫画? 顎が尖ったキャラが麻雀している漫画だろ?」、「いやオカルトな能力と素敵なオモチを持った美少女の方だろ」、「ああMMJ的にはそうか」どと言い合う。

「失礼ですね。私だって、私人としては一連の惨劇には心を痛めているのですよ。それに読書家が漫画を読まないというのは偏見ですよ」
「読書家?」

 嶋田の疑問に、辻は頷く。

「本を読めば、気分転換にもなりますし、何かしらの刺激を受けてよい考えが浮かぶこともありますよ。私はあらゆるジャンルの本を読んでいます」
「……そんな時間がよくありますね。辻さんも忙しいでしょうし」
「速読ですよ。おかげで1冊の本を素早く読めます。甘いものと本は頭の栄養源です。それに歴史書や過去の偉人が書いた本はいろいろと参考になりますよ」
「な、なるほど」
「ですから嶋田さんも気を付けた方がいいですよ」
「は?」
「何しろ、未来の日本人からすれば嶋田さんは偉人ですから……『下手なこと』は書かないほうが良いですよ? ああ、もう遅いかも知れませんが」

 そう言って辻は笑みを浮かべつつ会合の面々を見まわす。
 この辻の笑みを見た人間のうち、心当たりがある者が冷や汗を流し、嶋田は顔を引きつらせる。

「……まぁここまでにしましょう。我々に与えられている時間は有限ですから」

 寒気を感じた嶋田は、「ごほん」と少しわざとらしく咳払いをした後、話をもどそうとする。

「確かに」

 かくして嶋田によって議題は稲荷計画に移る。

「最優先にしていたイネの多収穫品種の開発は順調。このままいけばタイ王国を中心に、東南アジアにも緑の革命を普及できる、か」

 書類を読んでいた近衛は満足げに頷く。

「フィリピンの情勢不安も貧困が原因の一つ。緑の革命の恩恵が貧困層にも及べば、多少は情勢もよくなるだろう」
「それ以前に、我が国の貧困層や農家の救済ですよ。東北地方の農家は依然として厳しい状況ですから」

 衝号作戦によって発生した異常気象は日本にも悪影響を与えていた。日本の東北地方では2年続けての凶作となり、農家(特にコメ農家)の生活を直撃した。
 この事態を予期していた夢幻会が様々な手を打って農家の救済にあたっていたこと、日本製の工業製品の需要増加に伴い、都会で労働者の需要が高まっていたため、農家の娘や次男坊、三男坊が都会で職を得ることが容易になっていることが多くの農家の生活を守っている。だが農家の本業が揮わなければ拙いことには変わりない。

「より冷夏に強いイネの開発・改良も急がなければ」

 辻の意見に反対意見はない。
 ちなみに新種のイネの開発に並行して、小麦やトウモロコシの新種開発も進めており、いずれはカリフォルニアを拠点として北米西岸でも緑の革命を進める予定だった。

「まぁ稲荷計画などの食糧計画がうまくいけば、いずれ旬のもの以外の食べ物を堪能できるようになります。その日が楽しみですね」

 辻は待ち遠しそうに言う。これを見た北白川宮は力強くうなずいた。

「うむ。日本人、次に日本勢力圏に住む住人達が幸腹を感じられるようにする。それが我々の使命だ」

 稲荷計画はあくまで日本側勢力圏の食糧生産能力の底上げを図る物に過ぎない。夢幻会はイギリス、ドイツの支配地については基本的に「勝手にやってくれ」がスタンスだ。インドも混乱が続いている以上、手を入れるつもりはない。支那(華北地域)などは考慮にすら値しない。
 それは国力の限界という問題に加え、「やりすぎた」という戦前の反省を基にした不干渉政策でもあった。
 辻はその政策に賛意を示すと同時に「ドイツやイギリスの底力が決して侮れるものではない以上、他国が沈んでいる内に、日本は更に前に進まなければならない」と考え、その戦略を推進している。

(NC工作機械の開発も進んでいる。これで異品種大量生産さえも可能になり、熟練工の技術をある程度まで補完できるようになる。ドイツの工業力は侮れませんから余裕があるうちに、とことん突き放さないと。ああロシア人も侮れない。後々のことを考えて、彼らは軍需に偏った産業構造にしておかないと。あとは状況次第ですがロシア人と満州にはF1種を与えるのもいいかもしれませんね)

 何はともあれ、稲荷計画が進んでいることが確認されると、幾つかの議論がなされた後、速やかに外交に議題が移った。

「……独英に何か動きは? サウジアラビア、イラク、イランがオブザーバーとして参加することをただ傍観するとは思えないが」

 嶋田は新たに情報局局長に就任した堀と吉田外相に視線を移す。

「イラン、イラクの在独大使が、オブザーバーとしての参加についてドイツの了承を得るため3回ほど、ドイツ外務省を訪れたことが確認されましたが、それだけです。中東のドイツ軍の態勢にも変化はありません。イギリスにも大きな動きは確認されていません」
「外務省も同様です。イラン、イラク、サウジアラビアからはオブザーバーとしての参加が認められたことに感謝するとの返礼が来ています」

 堀と吉田の答えを聞いて、陸相の永田が口を開く。

「イラン演習で大敗した所為でしょう。強気のヒトラー総統でも、この局面で迂闊な動きは取れないはず。英国もインド洋演習で彼我の実力差を知った以上、我々を挑発するような真似は控えると思われます。いえ、イギリスにとって我が国が外交の復活を目指していることは望ましいので、妨害よりも会議の成功を願うでしょう」
「確かに。仮にドイツが動くとしても、ドイツ空軍が疾風に対抗できる新型機を開発してからでしょう」

 永田の意見に軍令部総長である古賀も頷いた。
 しかし嶋田の表情は晴れない。これを見た山本は、嶋田が『何か』引っかかっていることを悟る。

「何か思うところが?」
「……いや、何でもない」

 サンタモニカ会談で直接ヒトラーと会ったことがある嶋田は「ハッタリやペテンを得意とするヒトラーが、こうも静かにするとは考えにくい」と思ったのだが確証がない以上、不用意なことは言えない。そんな嶋田を見た近衛は、少し考えた素振りをした後、口を開く。

「嶋田元帥の懸念も判らなくはない。露骨ではないが、こちらの勢力圏の団結をかく乱しようとドイツが何か手を打ってくる可能性は非常に高い。ドイツ側の拠点がある大陸沿岸の国際都市周辺の動きは監視を強化するべきだ。後、独英の動きをけん制するのなら、トランジスタ関連技術の公表も利用できる」

 トランジスタ・コンピュータが優秀な暗号解読機になりえることを列強が理解すれば、自国の暗号が筒抜けになっているかもしれないと考え、暗号の刷新を図ることは確実だ。そうなれば、列強の動きをさらに封殺でき、日本が必要とする時間を稼ぐことが出来る。

「事前の稲荷計画、大和型戦艦の発表。これらを見た上で我が国に与するか、ドイツやイギリスに与するか……彼らに判断してもらおう」
「まぁそれでもドイツと内通しようとする者はいるでしょうね。特に隣の半島国家には」

 この辻の台詞に全員が顔をしかめる。
 彼らからすれば、韓国は獅子身中の虫でしかない。自分たちが打ち立てた傀儡政権がいるからこそ、日本陣営として扱っていたものの、信頼度は低い。
 まず実務を担う官僚、特権階級たる両班の腐敗は目に余る。日本がいくら支援を行っても、効果が薄いのだ。そして改革を促しても反発するだけでなく、日本からの支援が少ないせいだと主張する始末。それでいて日本から派遣された役人に賄賂を渡して、甘い汁を吸おうとする者は後を絶たない。
 政府の腐敗と奴隷貿易の横行に絶望して、日本領『東遼河』、あるいは日本本土への密入国を目論む者も減る傾向がない。むしろ日本が繁栄すればするほど増える有様だ。

「……そもそも我々がいうように改革を進めていれば、支援を拡大すると言っているのに。今のままで支援を増やせとは」

 杉山がぼやくように韓国は扱いに困る国だった。
 近衛や辻も困った顔で答えに窮する。彼らは韓国内部で「比較的マシ」な人間を選び、地位と権限を与えたが……その選ばれた人間の周りにたちの悪い大量の取り巻きが発生したのだ。取り巻き曰く「出世した者は一族郎党の面倒を見る義務がある」……その態度に日本側は開いた口が塞がらない。

「まともな人間ほど、あの国を見限るのがよく判ります」

 実情を知る辻はそう言って嘆息する。
 日本側も一族郎党をすべて切り捨てろとは言えなかったため、親兄弟程度ならと思っていたが……その親兄弟が「親族を見捨てるのか」の大合唱。これでは当人も堪らない。おまけに本人はまともな仕事をしても、その取り巻きが悪行に手を染める事例も多い。
 そして更に頭痛がするのが、彼らの部下たちだ。日本が教育に力を入れていなかったために、問題が多かった。具体的に言えば能力はあっても人柄が信用できない、又は人柄は信用できても能力がない、又は能力がない上、人柄も信用できない……そのいずれかの人間が多かったのだ。それでも何とか組織を回しているものの、そんな組織に付け入るスキが多いのは当たり前で、宮廷内の反日派を封じ込めるどころではない。
 反日派を買収する工作も行っていたが、買収した人間の多くは面従腹背であり、裏で何かしらの工作をしていることが確認されている。

「小中華思想や儒教(笑)に毒されすぎているのですよ。自分たちよりも立場が低い筈の日本が世界の頂点になり、自分たちを格下に見ている。おまけに日本は兄である韓国を重用しない無礼者……そう思っているのでしょう。あの国を近代化するより、月面基地を作る方が難易度が低い気がしますよ」

 辻は半島の住人を小馬鹿にするようにため息をつく。嶋田もこの辻の意見に同意する。

(多少はマシな北朝鮮を作るどころか、史実かそれ以下の国にしかならない、か……既存のものをすべて叩き壊してから建て直すしかない、か)

 嶋田も朝鮮半島については匙を投げたかった。
 だが日本の裏庭と言ってよい位置にあるため、無視することは叶わない。真空パックにつめて放置しておきたいが、その真空パックの中身が酷すぎて悪臭が漏れかねない状態だった。

(かと言ってドイツ人の真似事もできない。さてさて、どうするか……)

 嶋田は頭をひねるが、一気に問題を解決できる良案などそうそう容易に出るものではなかった。

「匙を投げたい。それも全力で……」
「嶋田さんの手でギネスの新記録が出そうですね。まぁ嶋田さんの思いが飛距離に反映されるなら……冗談洒落抜きで月まで届きそうです」
「辻さん、そもそも匙を投げた記録があるんですかね?」
「さぁそこまでは。まぁあの国については……私も匙を投げたいですよ。いやはや、全く、40万光年ぐらい彼方に国ごと引っ越してくれれば静かなんですが。まぁそんな冗談を話していても仕方ないので、何かしらの対策を立てておくことが必要でしょう。現状の政策が破綻したときに備えて」

 辻の台詞を聞いた近衛は露骨に嫌な顔をする。

「我が国による直接統治、と?」
「韓国政府に統治能力がないことが誰の目にも明らかになった場合で、期間限定という但し書きが付きますが……それは乙案です」
「……では、甲案は?」

 辻は黒い笑みを浮かべ、彼が考えた『甲案』を述べ始める。それを聞いていた面々は最初は唖然となり、そして青ざめた。

「……それは幾らなんでも」

 話を聞き終えた近衛は苦い顔をして反対したが、辻は己の意見を変えない。

「確かに現地の住民には多大な犠牲を強いるものですが、ある意味、彼らにとっては本望でしょう。ええ、小中華思想の持主にとっては、ね」
「「「………」」」
「それにこれは我が国だけでなく、多くの国にとっても利益になります。特に旧北京政府の愚行のせいで要らぬ苦労している国々は。何しろ亡霊退治となれば大義名分には丁度よく、亡霊との違いを明確にできる。まぁ亡霊退治のために我々も少なくない出費を強いられますが……破綻した状態を維持するよりはマシでしょう」
「諸外国がどう見るかも問題では? これではドイツと変わらないと思われかねませんが」

 この吉田の反論に、辻は平然としていた。

「連中が暴発すれば、話は別ですよ。少なくとも帝国を激怒させ、懲罰行動に出るに値するような行動を彼らがすれば、だれも文句はつけません。まぁ仮に甲案を実行するにしても 今すぐだと、ただでさえ煩わしい強硬派が勢いづく可能性がありますから4、5年ほど先がよいですね……いや、しかし」

 辻が急に言いよどむのを見た嶋田は首をかしげる。

「何か?」
「いえ、私が何かしなくても勝手に自爆しそうな気がするんですよね……」
「いくらなんでも、そんなことは……いや、絶対にないとは言い切れないか」
「ええ、楽観的に事態を想定するのは危険すぎます。物事は悲観的に想定し、楽観的に行動せよと言いますし」

 何はともあれ、この会合での議論を叩き台として、新たに対韓政策が政府内で検討されることになる。
 現在の政策である『間接統治』に徹する丙案。
 一歩踏み込み『大日本帝国が期間限定で直接統治する』という乙案。
 そして……万が一の保険である甲案。
 丙案、乙案は朝鮮半島に統一国家を残すプランであり、曲がりなりにも民族自決の精神を(日本なりに)尊重するものでもあった。
 それに対し、甲案は現地住民に対する配慮より、大日本帝国の本土と裏庭の安定化のみに力を入れるプランであった。外務省はあまり良い顔をしなったが、半島の目を覆わんばかりの腐敗振りを前に出されては反論も難しく、加えて万が一の保険という扱いであったため最終的に了承した。

「まぁ『よほど』のことがない限り、甲案はないでしょう」

 発案者であるはずの辻自身、そう言っていたが……日本が放置していた韓国に干渉するべく、ヒトラーが行った謀がさざ波を引き起こすことになる。

「これが話の親衛隊か」

 首相官邸の執務室で報告を聞いた嶋田の視線の先。そこには白ロシアで起こった反乱を鎮圧すべく出動したSSが写った写真があった。
 普段なら、「いつものこと」と流すだろうが……残念ながら、今回は出動した部隊の構成が特異であるため、嶋田も無視することは叶わない。

「日系人を含む有色人種によって構成された武装親衛隊……単純に有色人種でも、功績次第で栄達できることを示すことを喧伝するため……そう考えてよいものか?」

 稲荷計画をふくむ各種計画を発表する直前に行われたドイツの発表。
 それがいかなる意図をもって行われたものか、それを知る者はドイツ以外にはまだいなかった。






 あとがき
 提督たちの憂鬱外伝 戦後編22をお送りしました。
 環太平洋諸国会議を前に、ヒトラーのターン(?)が始まりました。
 これに対し、次回以降で稲荷計画を含む日本側のプロジェクト公表、そして環太平洋諸国会議の開催となります。
 ……作中で昭和20年が終わるまで、あと何話必要なのだろうかと思うことがあります(汗)。
 それにしてもナチスドイツと韓国の組み合わせ……架空戦記では珍しい組み合わせですね(笑)。
 それでは拙作にもかかわらず、最後まで読んでくださりありがとうございました。
 戦後編23でお会いしましょう。